黒猫のワルツ

しばらく思い出し笑いした

 

皆様こんにちは

LUKAでございます

 

 

 

私が働いている会社は

ありとあらゆる事を引き受けてしまう

『町の何でも屋』のような事もやっている

 

メインは違うんだけどね!

 

メインは全然違うんだけれど

正直『何でも屋』の依頼の方が圧倒的に多い印象

 

 

何でも屋をご利用のお客様は

圧倒的に高齢者の方々が多い

 

家からほとんど出る事が出来ないような

高齢の方だったり

とてつもない山奥に住んでいて

ほとんど銀行や郵便局がある場所まで降りてこない

なんて方も居る

 

 

なので

請求書を送った所で

そのお金が銀行に振り込まれる事は

 

 

ほぼない

 

 

電話がかかってきて

「銀行まで行けないんだけれどどうしたらいい?」

みたいな事を言われちゃう

 

 

そこで私の出番!

 

集金カーに乗ってどこへだって集金に行っちゃうぞっ☆

 

 

 

ある日の事

男性のお客様から「集金に来て欲しい」という電話を受け

支度を始めた私

 

 

まとも「あ、もしかしてどっか行くー?」

 

私「〇〇町の〇△さんの所と

  そのあと△〇組合へ荷物取りに行きます~」

 

まとも「帰りに郵便局行ってきて欲しいなぁー!

    収入印紙無くなってきてるんだ~」

 

私「分かりましたーとりあえず20枚でいいですかね」

 

まとも「うん!」

 

 

収入印紙を買う為のお金を用意し

集金バッグに詰め込む

 

 

まとも「え!!!!!!?

 

私「えっ!!!?」

 

 

びっくりした!!!

 

何事!?

 

 

まとも「〇〇町の〇△さんの所行くって言った!?」

 

私「あ、はい」

 

まとも「マジで!?あの人また受けてたんだ!?

    うわー!あーそう・・・集金かぁ・・・あー・・・」

 

 

え???

 

 

まとも「ちょっとおかしい人なんだよねぇ・・・」

 

私「そうなんですか?」

 

まとも「ちょっとおかしい人だから・・・

    お釣りのお金すっごいいっぱい持って行った方がいいよ」

 

私「わかりましたー

  ・・・・・・・・・・???」

 

 

・・・・・・・・・・・え?

 

どういう事?

 

ちょっとおかしい人だから

お釣りのお金をいっぱい持っていく

って・・・何?

 

集金バッグを見つめながらしばし考える

 

 

支払ってもらう金額は変わらない

変わるとしたら預かるお金だ

 

12,000円の請求で・・・

例えば15,000円を預かったら3,000円返す

 

12,000円の請求で

例えば20,000円を預かったら8,000円返す

 

・・・これだけだよね?

 

 

最大8,000円持っていれば何も問題ないのでは???

 

 

私「いっぱい???」

 

まとも「小銭とか凄い量持って行った方がいい」

 

私「あのっ・・・今回12,000円の請求なんですよ

  小銭は不要では・・・?」

 

まとも「ううんそれでも持って行った方が良い」

 

 

どういう事!!!!?

 

 

私「あっ・・・両替を依頼されるとか・・・?」

 

まとも「いや、そういう事じゃないんだけど・・・

    とにかくなんかいっぱい持って行って!

    何が起きるかわかんないから!」

 

 

えぇぇぇ!!!?

 

ちょっと訳が分からないなぁ!?

 

 

20歳「その人って皆が「おかしい」って言ってる人?」

 

まとも「そーそー!やばい人!」

 

 

やばい人!!!?

 

 

私「ど、どういう事ですか・・・!?

  電話では普通でしたけど・・・!」

 

まとも「えぇ!?普通だった!?」

 

 

えっと

 

最初は「日曜日に集金に来てくれ」って言われて

「日曜は休みだから無理です」みたいな事を答えたら

「あんたら公務員かよ!」ってツッコミ入れてきたくらいかな・・・

 

ただの面白い人だと思うんだけど・・・

 

 

まとも「あたし何回か集金行ってるんだけどさー

    ほんっと毎回なんかおかしい事やるの!」

 

私「はぁ」

 

まとも「初めて行った時はインターホン鳴らしたら

    「入ってきて探してみて!」って言われてさぁ!」

 

 

突然のかくれんぼ要素・・・!!!

 

 

私「あははは」

 

まとも「その次だかは

    行ったらすぐ玄関の所に居たんだけど

    にやにやして全然お金くれないの!

    そんで急に

    「後ろ振り返ってごらん」とか言われて

    何この人急に!って恐る恐る振り返ったら・・・

    後ろの壁に封筒張り付けてあってそこにお金入ってて」

 

 

やべぇ!!!

超おもしろい人じゃん!!!?

 

 

まとも「「今ポケットから出すから!」って言って

    いきなり自分がはいてるズボンおろして

    うわぁっ!と思ったらその下にもう一枚ズボンはいてて

    そのポケットからお金出してきたり・・・」

 

 

ちょっとしたドッキリ・・・!

 

 

まとも「もともと魚屋かなんかやってたんじゃないかなぁ

    玄関とは別の所にお店の入り口みたいなのあって

    何回インターホン鳴らしても出てこなくて

    そっち回り込んだらそこで床に転がって寝てたり!」

 

私「面白い人ですねぇ!?」

 

まとも「おも・・・面白い!?

    頭おかしいじゃん!

    家の中もゴミ屋敷みたいに汚いし!

    海苔の缶みたいなの渡してきて

    開けたらそこにお金じゃらじゃら入ってて

    そこから好きなだけ取って良いよとか訳わかんない事言うし!」

 

20歳「やばい人だ・・・」

 

私「・・・・・・・・・え?」

 

 

これってやばい人なの!!!?

 

めちゃくちゃユーモアのある面白い人じゃん!

 

 

えー会うの楽しみだなぁ!

 

 

しかし

私たちの会話を聞いた作業員さんたちも

口を揃えて「あれは頭がおかしい」と繰り返すばかり

 

聞いていた限り

可笑しい事はあっても

頭がおかしいと思うようなものはなかったんだけど・・・

 

それとも

会ってみなければ分からない危険さがある

という事なのだろうか・・・!?

 

 

若干の不安と期待を胸に

〇△さんのお宅へ行った私

 

 

正面玄関のインターホンを鳴らすも

反応が無い

 

これはもしや・・・?

 

 

家の周りを見渡し

道路に面した反対の方へ回り込んでみると

 

そこには確かに

昭和の魚屋さんのような

大きく開口されたガラス張りの入り口があった

 

 

そして中には

パイプ椅子に腰かけた男性の姿が・・・!

 

 

私「こんにちはー!

  △△会社ですー!」

 

〇△「おっ!来たかい!いらっしゃーい!」

 

 

入り口から中へ入ると

昔は魚を並べていたであろう場所に

所狭しと・・・えーっと日用雑貨やら菓子パンが乗っていて

 

・・・何というか・・・

 

 

汚い

 

 

まるで野良猫が住処にしている空き家

みたいな雰囲気がある

 

そこに一人ポツンとパイプ椅子に座っている男性

 

マスクをしているが

マスクは汚れて黄ばんでいる

 

 

だけど

 

 

目が

 

 

とてつもなく優しい目をしていた

 

 

〇△「すぐわかった?」

 

 

・・・野良の老猫をそのまま人間にしたみたいな人だな・・・

 

 

私「はい

  以前訪問した者からこちらの入り口の事を聞いていたので!」

 

〇△「そーそれならよかった!

   いやーさっきまで入院しててねぇー

   4週間も入院してたのよー大変だった!」

 

私「あらっそうなんですか?」

 

〇△「帰ってきたら請求書届いてたから電話したのよー

   えーっとそんでいくらだっけ?」

 

私「12,000円です」

 

〇△「したらここから取って~」

 

 

お金がじゃらじゃら入った大きな瓶を渡された

 

 

なるほど!?

 

今回は瓶バージョンね!

 

 

しかし・・・

どう見ても瓶の中には

5,000円ほどしか入っていない

 

 

〇△「なんで入院してたと思うー?」

 

私「・・・・・・・・・・・」

 

 

男性のすぐ近くには

炎症を抑える為に処方される薬と

松葉杖が立て掛けられている

 

 

私「足か腰を痛めたんですか・・・?」

 

〇△「えぇーーーなんでよーーー!!?

   そこはコ〇ナですかって聞いてよー!」

 

私「えぇだって違いますよねぇ!?

  そこに松葉杖置いちゃってるじゃないですか!」

 

〇△「コ〇ナかもしれないでしょー!?

   このタイミングで長期入院だよー!?

   疑ってよそこー!」

 

 

いやいや!

 

すぐ横に松葉杖あんじゃん!

明らかに足か腰でしょ!?

 

せめて隠しておけよ・・・!

 

 

私「あの、ちょっとばかし足りないんですが・・・!」

 

〇△「あれぇー足りなかったー!?だよねぇー!

   不安になったー!?

   大丈夫!ちゃーんとあるから!」

 

 

財布の中から

くしゃくしゃになったお札を取り出す男性

 

 

〇△「最初は個室だったんだけどさー

   途中から大部屋になってねー

   夜となりの爺さんが咳してうるさくて寝られないのよこれが」

 

私「大部屋だと落ち着かないですよねぇ」

 

〇△「テレビも見れない酒も飲めないどこにも行けない

   俺もー辛くて寂しくて

   寂しくて寂しくて

   ないちゃったよ」

 

私「ふふっ」

 

〇△「ほんとだよ!?

   ほんとにないたんだよ!

   毎晩毎晩寂しくてないたんだよ!」

 

私「そうなんですか?

  そんなにさみしかっ」

 

〇△「みゃぉーう みゃぉーう」

 

 

ないたって

 

泣いたんじゃなくて鳴いたのかよっ・・・!!!

 

 

くっそ下らねぇけど面白い・・・!

 

 

私「ぶっふっ・・・!!!

  えっ!!

  なくってそっち!!!!!!!!!?」

 

〇△「みゃぉーう みゃぉーう」

 

私「大部屋でそんな事したらいい迷惑じゃないですか!

  なんてこった!!」

 

〇△「お姉ちゃんここ来たの初めてだよね

   良い子だねぇお姉ちゃんノリが良い!」

 

 

ダメだ・・・!

 

 

私この人めちゃくちゃ大好きだ・・・!

 

 

すっげー汚いしなんかもーどうしようもないけど

皆が言うように「頭がおかしい」なんて思えない・・・!

 

くっそ下らねぇ!けどそこが良い!

 

用が無くても遊びに来て

この人のバカな話聞いていたいわ・・・!

 

 

私が笑っている姿を見て

男性は目を糸のように細めている

 

きっと誰かを笑わせるのが好きな人なんだろう

 

 

だけど

それがきっと伝わらない時もあるのね・・・

 

 

確かに

初対面でこんな感じだったら

冗談の通じない人だったらびっくりしちゃうのかもしれない・・・

 

 

10分ほど会話を楽しんだ私は

名残惜しいけれど挨拶をして次の目的地へ向かう事にした

 

 

〇△「また集金の時おいで~」

 

私「次も楽しみにしていますー!」

 

〇△「ほんと!?じゃあ張り切って用意しておくね!」

 

 

すげーーーー良い人じゃぁぁぁーーーん!!!

 

 

可愛いだけの人だよ!?

 

全然頭おかしくない!

 

 

楽しい時間を過ごし

気分が良いまま会社へ戻った私は

「どうだった!?」「今日もやばかった!?」

という質問をされまくった

 

 

そのたびに

面白おかしく

「俺ないちゃってさぁ

 みゃぉーう みゃぉーう」の件を話して聞かせた

 

皆もあの男性の事を「頭おかしい人」じゃなくて

「おもしろおかしい人」って見てあげておくれ・・・!

 

 

まとも「あっははははははは!」

 

20歳「やっば・・・!

    おなか痛い・・・!」

 

私「おじさん寂しかったんだろうなぁ

  夜すすり泣いたんだろうなぁーと思ったら

  まさかの展開でしたよ!」

 

まとも「あーめっちゃ笑った・・・!

    でもさーこれ絶対

    ルカさんからルカさんの言葉で聞いたから面白いんだよ?」

 

 

 

 

20歳「絶対それー!!!

    ルカさんの話し方が面白いから笑えたけど

    自分が目の前でいきなりそんな話されたら

    真顔になると思う・・・!」

 

 

えぇぇぇぇーーーー!!!?

 

 

なんでだよー!?

 

むしろこれは

あの時あの場であの男性のテンポで聞いたほうが

圧倒的に面白かったやつーーー!!!

 

 

お願いだからそういう偏見やめて

皆もあの野良猫みたいな男性好きになろうよーーーー!!!?

 

 

 

ただ

 

マスクが黄色く変色していた事は

伝えたらマイナスイメージしかなさそうなので

 

割愛した

 

 

 

すまねぇ面白いおっさん・・・

ありのままを話すにはリスクが高すぎたんだ・・・!!!