黒猫のワルツ

社長以上に喋る社長

 

皆様こんにちは

 

昨日の記事に頂いたコメントの数々・・・

 

私のブログの読者様は

どうやら『歯を食いしばって生きる』人たちばかりらしい・・・!

 

私たちもっと肩の力を抜いて

口半開きで生きて良いらしいよ!!!?

 

よだれ垂らして生きていこうぜ!!!?

 

 

そんな訳で

歯医者さんでは

「ここまでの人は珍しい」

「普通の人は上の歯と下の歯が当たらない」

と言われて

 

私は少数派の悪癖持ちなのか・・・

とショックを受けていたんだけれど

びっくりするほど仲間が多かった事を知って

ホッとしたLUKAでございます

 

 

歯を食いしばる事を覚えてしまって生きてきた私

 

若い頃は

「時間よりお金だ!

 人一倍稼いでやるぞ!」

という気持ちが非常に強く

 

なかなか過酷な職場ばかりを自分から進んで選んでいた

 

 

その中の一つがガラス工房である

 

 

朝早くから深夜遅くまで働き

 

家へ帰って寝て起きたら

私を深夜に自宅まで送ってくれたタクシーに乗って

再び職場へ行く生活

 

自由なんて無かった

 

自由なんて無かったけれど

私の意識の表面上では

「これで良いんだ・・・!」と当時は思っていた

 

 

いやいや・・・

お金で買えない物があるんだよルカさん・・・

君は自分の本質を見誤っているだけなんだ・・・

 

 

ただ

そんな中で必死に私が作り上げた作品は

 

かなりの頻度で再会する

 

 

例えば

集金に行った先で玄関に飾られている置物が

私がガラス工房で作った作品だったり

 

修理やアフターケアなんかで訪問した家の

棚にかけられているアクセサリーが

私がガラス工房で作った作品だったり

 

なんなら社内には

私がサンドブラストの客注で作った作品が

ゴロゴロ飾られている

 

 

社内の物は最初気付いていなかったんですよね

 

最近になって掃除しながら

 

(なんか見覚えあるんだよなぁ・・・)

 

とじっくり眺め

 

 

(これ私が死にそうになりながら大量に作ったやつ・・・!)

 

と気付いた

 

 

1つ気付くと次々気付く

 

あそこにあるのも私がやったやつだし

そこにあるのも私がやったやつ・・・!

 

 

同じ物を誰かが作った

って事はほぼ無いので確実に私の作品である

 

と言うのも

 

私が退職した後は

その後を引き継げる人が現れずにやむなく閉めた場所もあって

そこで作られていた作品自体が打ち止めになってしまった

という物がほとんどだったからだ

 

 

退職前にあんなに必死にレシピ的な物を作っておいたのに

一体どうしてなんだ・・・!

 

求められているのは器用さでも技術力でもない

 

 

ただただ『集中力』だけなのに・・・!!!

 

 

 

朝の掃除をしながら

社長室に飾られている

ガラスの花をあしらったフォトスタンドを眺めていた私

 

 

社長「それ良いでしょ

   ガラス屋の社長に貰ったの

   もう大分前に貰ったやつなんだけど

   あんまりこういうの見ないよね」

 

私「気に入って下さって嬉しいです」

 

社長「・・・・・・・・・・・ん?」

 

私「・・・これ私の作品なんですよ

  3つくらい作ったんですけど

  別の工房主さんから貰ったステンドグラスの端材で作ったから

  どれもデザインが違うんです」

 

社長「え!?

   これルカさんが作ったの!?

   俺こういうの全然分かんないけど

   なんかすごいなって思ってた!」

 

私「こんな風に花を立体になるように窯で焼いて作る

  ってあまり無いらしいんですけど

  やってみたら飛ぶように売れたから

  色々試してた時の作品ですね

  また再会出来ると思わなかったです」

 

社長「えぇーそうなんだぁ!?

   じゃあもしかして他にもあるんじゃないの!?」

 

私「あぁ・・・そうですね・・・

  事務所に飾られている物も

  まともさんのデスクに飾られている物も

  会長室に置かれている物も

  私が手掛けた作品ですね」

 

社長「す・・・すごいじゃん・・・」

 

 

実は

今働いている会社の社長は

ガラス工房の社長の大学の後輩らしく

とても仲が良い

 

そのせいもあって

今の会社には私が以前勤めていたガラス工房の作品が

かなりの個数飾られているのだ

 

 

社長「あの社長自分が気に入った物とかお勧めあったら

   持って歩いて見せて周ったりしてんだよ!

   うちにそんなにルカさん作ったのあるなら

   よっぽど気に入ってたんじゃない!?」

 

 

そうかぁ

ガラス工房の社長

こうやって私の作品を宣伝してくれてたのかぁ

 

 

や・・・辞めてすまん・・・

 

体力的にも精神的にもきつかったんよ・・・!!!

 

 

そしてその2日後

 

 

物凄い勢いで事務所の入り口のドアが開かれた

 

 

バァァァーーーン!(ビクッ!)

 

 

男性「ちゃーー!社長居るかぁ!?

   うぉぉ!ルカぁぁぁああ!

   ここで会ったが百年目ぇ!!」

 

私「!!!!!!!?(ビクッ!)

 

 

顔を上げて入り口の所を見ると

 

がっつり見覚えのあるガラス工房の社長が・・・!

 

 

ガラス社長「お前ぇ!何してんだこんな所でぇ!

 

 

こ・・・

 

この勢いよ・・・!

 

思わず後ずさりして逃げたくなるような

恐ろしいまでのグイグイ感

忘れもしねぇわ・・・!

 

 

私「ごっご無沙汰しております

  変わらずお元気そうでなっ」

ガラス社長「ちょっと前に聞いてたぞ!

      お前今ここで働いてるんだってな!?

      何をやってるんだ一体!

      えっまさか事務員になったのか!?

      お前が!?お前が!!?」

 

私「あのっ事務員で・・・」

 

ガラス社長「嘘だろ!?

      お前に事務なんて合わねぇよ!

      何してんだ一体!お前バカじゃねぇのか!」

 

 

そう言われましても・・・!

 

 

そうだよねぇ

この人私が退職する時も

「体力的にも精神的にも辛い

 パソコンの勉強をして事務職に就きたい」

って話をしたら

 

「お前が事務職なんてそんなバカな事するな!

 お前は作り手と接客で活きる人間だぞ!!?」

と大激怒していたんだった・・・

 

更には

 

「だったらうちと契約して

 自分の家で作品作りをすりゃいい!

 設備は整えてやるから!!!」

 

とまで言っていたのだ

 

 

あたい

 

事務だって出来るもぉおおおおおん!!!

 

 

社長「やっぱり来たか・・・

   いつかルカさん見に来る気がしてた・・・」

 

ガラス社長「っていうか前聞かなかったけど

      こいつ一体いつからなんでここに居るの!?

      なぁにしてんのこいつぅ!??」

 

社長「4月からもううちの社員なんで!」

 

ガラス社長「こいつがどういう奴か分かってるの!?

      事務員なんてやらせてたらもったいねぇぞ!

      なんか違う事やらせてみ!

      えっなんで事務員なの!!!?

      何その制服!似合わねっ!」

 

私「・・・・・・・・・

  (どいつもこいつも何なんだ社長って生き物は・・・)」 

 

社長「あはははは・・・

   やっぱりそうなんですかね・・・

   そんな気はしてたんだけど・・・」

 

 

いやいや!!!

 

私事務員なんですよ!!!

 

なんで事務員ってそりゃ

事務員になりたくて事務員になったから事務員なんですわ!

 

 

・・・えっ

 

私そんなに事務員に向いてません・・・?

 

すげーショックなんですけど・・・

 

 

社長「いやー最初聞いた時びっくりしたわー!

   で大丈夫か?

   合わなかったらすぐうち来い真っ先にうちに来い」

 

私「えはっ!?」

 

社長「ちょっと!!!

   そんで何しに来たんですか先輩!

   えっ・・・ほんとにルカさんに会いに来たの・・・!?」

 

ガラス社長「あっ違う違う違う違う!お歳暮!

      今年コロナのあれで流行ってる妖怪の置物ね!

      無病息災!はい!」

 

 

ガラス屋の社長が

木箱を社長に渡した

 

 

社長「開けて良いの」

 

ガラス社長「開ければいいしょ何遠慮してんの」

 

 

社長が木箱を開けるのを

横から覗き込む私

 

 

ガラス社長「ガラスとか窯とか触りてぇだろぉ」

 

私「ブンブンブンブン!」

 

ガラス社長「チッ駄目か・・・なんでだよ・・・

      お前が事務員とか意味が分からんわ・・・

      腹立つなぁ・・・」

 

 

ガラスにも窯にも触りたい・・・!

 

それは確かにそうなんだけど

あんな過酷な職場では生きられないもん・・・!

 

もう立ち仕事嫌なの!!!

 

 

社長が

木箱から妖怪の置物を取り出した

 

 

その置物をじっと見つめた私は

 

ボソッと本音が出た

 

 

私「・・・なんか全然違う」

 

社長「え?」

 

ガラス社長「お?」

 

 

その置物は

以前と変わらずガラス工房の作品らしい作品だった

 

だけど

 

何かが圧倒的に違う

 

 

これじゃない!!!

 

 

ガラス社長「何が違うって?言ってみ?」

 

私「・・・・・・・・・可愛さが違う!」

 

社長「可愛さ!?」

 

 

そう

 

いつもと同じように作られているはずなのに

妖怪の顔に可愛さが圧倒的に足りないのだ

 

私が大好きだった工房のおじさんの作品は

どれをとっても

えも言えぬ可愛さのような物があり

どんなに高かろうと思わず買ってしまうような

そんな魅力があったはずなのに

 

これからはそれが感じられない・・・!

 

 

私「・・・・・・・・・・・・・

  えっ工房主の〇〇さんどうかしたんですか?

  これ違う人の作品じゃないんですか?」

 

ガラス社長「分かるか!!!!!!!!?」

 

 

えっ

 

 

ガラス社長「お前はなぁぁあ!

      だぁからよぉやっぱり良いんだよなぁぁあ!

      ほれ!ほれ!どこがどう違うか言ってみろ!」

 

私「えぇっ・・・どこって・・・

  〇〇さんの作品はこう・・・

  目の位置も鼻の位置も

  最高の可愛さを生み出す為に洗練された位置だったけど

  これは・・・

  ただ普通に・・・

  凡庸に可愛いだけ・・・?」

 

ガラス社長「あぁそう・・・凡庸な・・・?

      凡庸・・・うまい事言うな・・・

      具体的にどうすりゃ前同様に可愛くなる?」

 

私「・・・あれは・・・

  〇〇さんの人柄によるものだったと思うんですよ・・・

  〇〇さんは見た目はただの危ないおじさんだったけど

  可愛い物をこよなく愛してたと思うんですよね

  でもこれは無理して可愛い物作ろうとしてる感じする

  これを作った人は本来

  可愛い物を作るのに向いていないのでは・・・?

  食器とかを作る方が向いてる人なんじゃ・・・」

 

社長「そうなの」

 

私「何となくそんな気が・・・」

 

ガラス社長「辞めたんだわ

      半年前に」

 

私「!!!!!!!!!!?」

 

 

えぇぇぇーーーーー!!!?

 

マジショックぅーーーー!

 

 

あの人の作品

小さな物でも1万円以上するけど私

3つも買ったくらい好きだったのに・・・!

 

 

ガラス社長「仕方ないから他でグラス作ってた奴呼んだんだけど

      そこから微妙に売り上げ落ちてんだよなぁ

      俺たちみたいなそういう目持ってない奴から見たら

      前と何が違うのか分からねぇの

      前と同じように作ってるのに何が違うの?って」

 

社長「へぇー

   それが・・・違って見えたんだ?」

 

私「全然違いますね・・・

  違和感しか無かったです・・・」

 

 

妖怪の置物を手に持って

あらゆる角度からチェックをする

 

全てにおいて何かが違う・・・

 

 

〇〇さんの作品は

全てにおいて可愛くてバランスが取れていたのに・・・

こんなにも違うものなのか・・・

 

 

これには

『愛くるしさ』のような物が欠如している

 

 

私「可愛くな!」

 

ガラス社長「あっはははははは!

      お前は変わらねぇな!」

 

社長「そんな事言っちゃっていいの!?」

 

ガラス社長「いやいやこいつはこれで良いんだわ!

      こいつの感覚はまず間違いないから!

      でもだからってこいつが可愛いもん作れるか

      っつったらそうじゃねぇから不思議なもんでなぁ

      こいつは可愛いもんより綺麗なもんばっかだから!

      こいつ見てて俺よく思ってたけど

      絶対こいつ子供の頃から滅茶苦茶根暗で

      家で一人でひっそりコツコツなんか作っては

      にやにやしてたタイプだぞ!」

 

 

それを言われると

あながち間違っていないから辛い

 

 

ガラス社長「じゃあまたなんか持ってくっから

      見てなんか意見言ってくれ!」

 

私「えぇっ・・・」

 

 

怒涛の勢いで現れ

怒涛の勢いで喋って

怒涛の勢いで帰って行こうとするガラス工房の社長

 

今の会社の社長が

『喋らなきゃ死ぬ』という病気だとしたら

 

ガラス工房の社長は

『動かなきゃ死ぬ』という病気だろう

 

社長って生き物は皆何かが普通と違うんじゃなかろうか・・・

 

 

 

去り際

ガラス工房の社長は

見慣れたいたずらっぽい笑顔でこう言った

 

 

ガラス社長「可愛くもなんともねぇ置物だけど飾っておいて!」

 

私「ぶふっ!」

 

 

いやあのっ・・・

 

 

思わず以前同様はっきり言っちゃってごめんなさいぃぃ!!!