黒猫のワルツ

あくびなんて可愛いもんだった

 

皆さんこんにちは

LUKAでございます

 

 

 

これは

私がまだ今の会社に入社して

数週間ほどしか経っていなかった時の事

 

いつものように

事務所のある建物を出て

数秒歩いた場所にある倉庫へ行き

部品類のチェック作業を行った私は

部品リストを眺めながら会社へ向かって歩いていた

 

私が勤めている会社には

5棟ほど別に建てられた倉庫が存在しており

どれも事務所がある建物から数秒歩いた場所にある

 

大きさはどれも

3階建てのちょっと立派な民家くらいのサイズ

 

こんなにもたくさんの倉庫は本来なら不要なんだけれど

もはや商品価値が無い

仕入れたはいいけれどそのまま放置されている物だったり

間違って発注しちゃったけど返品するのを忘れていた物だったり

傷をつけてしまって使い物にならなくなった物だったり

そういう物が倉庫の9割を独占しているので

 

倉庫があってもあっても足りない状況

 

そんな中で部品の在庫を確認するのはなかなか骨が折れる作業で

まだ部品の正式名称やなんかを覚えられていない私には

かなり過酷なものだった

 

 

その日も

リストにある物と同じ物なのかどうかが

不明瞭な部品があり

考え込みながら会社へ向かって歩いていた

 

 

うぅーん

品番が書かれていないから分からないけれど

確かあれはこの品番の物だったはず・・・

だけど若干色が違うのはどうしてなんだろう?

古い物だからなのか・・・

それとも似ているけれど異なる物なのか・・・

 

 

事務所がある建物に到着した私は

リストに視線を落としたままスタスタと建物の地下に入る

 

事務所がある建物には広い地下倉庫があり

そこには車が3台停められるスペースと

修理室と呼ばれる作業場

そして大量のごみ・・・じゃない部品類と

更にはゴミ捨てスペースがある

 

その横の扉から入って階段を上がると

事務所に辿り着けるのだ

 

 

スタスタと地下を進み

そろそろ階段に繋がる扉の場所だ

と思って顔を上げた私は

 

 

 

フリーズした

 

 

男性たち「!!!!!!!!?」

 

 

そこには

見た事も無い作業着を着た男性たちが5人ほど居て

何やら畳を運んでいるではないか・・・!!!

 

 

私「ふわぁぁっ!!!!?」

 

男性たち「おっ・・・!!!?」

 

 

先に悲鳴を上げたのは私だった

 

 

私は

 

リストを眺めながら

「この辺りが会社ー」みたいな気分で

何となく視界の端に見えていた景色・・・?で判断し

そこに侵入したんだけれど

 

そこは

 

 

私が勤めている会社の手前隣にある

 

畳屋さんの地下作業場だったのである

 

 

そこへスタスタと入り込んだ挙句

いきなり悲鳴を上げたのが

この大馬鹿野郎の私である・・・!!!

 

 

私「まっ・・・・・・・・

  間違えました!!!

  となっ・・・隣でした!!!」

 

男性たち「・・・・・・・・・・・」

 

 

唖然とする男性たちに向かって大きく頭を下げた私は

勢いよくぐるっと反対を向いて

全力ダッシュですぐ隣の自分の会社に駆け込む

 

 

ぎひゃぁぁぁーーーーーー!!!

 

 

うぉおおおおおーーーーー!!!

 

 

やっちまったぁぁぁぁあああ!!!

 

 

はーずかしぃぃぃ!!!

 

 

私という人間は昔っからこう!

 

お寿司屋さんの店長は私のこういう部分を

そりゃーもうよく把握していらっしゃって

「お前はもうちょっとちゃんと景色と人を見ろ!!!」

と怒っていた

 

いやほんとその通りですね・・・!

 

あれから20年近く経ちましたが

いまだに私にはなんにも見えちゃいねぇんですわ・・・!!!

 

空いたテーブルの片付けをする事に集中しすぎて

おぼんが収納されている棚から

木で出来た大きなおぼんを勢いよく引っ張り出し

何度店長のスネの辺りにかってぇおぼんを叩きつけたか分からない

 

私の視野は200度もあるなんて言われているけれど

何かに集中している時の私の視野は

多分恐らく90度も無いんじゃなかろうか

 

 

・・・いやでもあれはさ・・・

 

そういう人間だって知ってたくせに

そんな私の近くにうかつに近付いてくる店長も悪くない?(責任転嫁)

 

 

以前の会社でも壁に向かって突進して行ったり

柱がある事に気付かず目の前まで来て曲がりきれずに肩を強打したり

まだドア開け切れていないのに部屋に入ろうとしてドアにぶつかったり・・・

 

子供の頃は電柱に突っ込んでいくタイプの人間だった

 

母もこんな私をよく「注意散漫」と言っていたが

返す言葉も見つかりません!

 

 

三つ子の魂百までか・・・

これもう直そうと思って直せるもんじゃない気がしてきたぞ・・・

 

 

いやーしかしほんっとやっちまったなぁ・・・!

 

これから畳屋さんの前通る度に恥ずかしいぞこれ・・・

 

 

翌日から何度か

畳屋さんの作業員さんと目が合う度に

気まずい気持ちで会釈をしていた私

 

 

もう二度と

同じ過ちは繰り返さない

 

 

 

・・・はずでした

 

 

 

それからわずか数週間後のある日

 

やらかした日と同様に

考え事をしながら歩いていた私

 

 

あの倉庫には紙とペンとガムテープが無い!

何かケースを用意してそこに紙とペンとガムテープを入れて

壁にでもひっかけておこう・・・!

えーっとそれから他に必要な物は・・・

 

よぉおーーーし!

早速準備だ!!!

 

 

そして

 

 

顔を上げると

 

 

ちょっと顔を覚えてしまった

畳屋の作業員のおじさんたちが

一斉に私を見ていた

 

 

私「・・・・・・・・・・ハァッ!(心臓バクンッ!)」

 

おじさん「・・・・・・・いっそうちで働くかい!?」

 

私「あぁぁぁぁぁーーーーっ!

  いやぁぁぁぁ!!!」

 

 

違うーーー!!!

 

 

違うんですーーーーー!!!

 

 

そんなつもりは全然なくてっ!!!

 

地面の斜め具合とか地下室全開放状態とか

なんかもうとにかく造りが似てるから

視界の端に入ってくる情報から「ここが会社」って思いこんじゃうんですー!!!

 

 

再び隣の畳屋さんに不法侵入をした私は

「もうダメだ・・・!」

「ほんっとうに申し訳ございません!」

「どうか!どうか通報だけはしないで下さい!」

などと訳の分からない供述をしながら何度も何度も頭を下げ

全力ダッシュで会社へ戻った

 

 

もう・・・ダメだ・・・

 

私はもうダメなんだ・・・!

 

何とかしてこのバカ行動をやめないといけないのに

どーーーーっしても考え事をしていると

足が勝手に畳屋に向かって行ってしまう・・・!

 

どんだけこの畳屋が好きなんだよ!

 

絶対畳屋の人たちに「あの女やべぇぞ」って言われてるよこれ・・・!

 

 

 

そうしてこれまでに

3度も畳屋に不法侵入をした私

 

この短期間でよくもまぁ懲りずに3度もやらかしたもんですよ

 

何なら最近は畳屋のおじさんたちと

ちょっと雑談するくらいには仲良くなっちまったじゃねぇか

 

良い人たちでよかった・・・

けど根本的な解決には一切なっていねぇ・・・

 

 

 

そして先日の事

 

 

社長「ルカさん

   色んな会社の人たちから評判良いよ」

 

私「えっ!そうなんですか!?」

 

社長「良い事務員さん入ったね

   って声掛けられる事多いから

   俺としても嬉しいよ

   ありがとね」

 

私「えぇー嬉しいです!

  でも変な所見られないように気を付けないとならないですね・・・」

 

社長「変な所?」

 

私「大きな口を開けてあくびをしている

  とか

  書類を落としてぶちまけている

  とか・・・」

 

社長「そんなの無いでしょう!

   そういえば隣の畳屋さんの社長も

   「良い人入って良かったね」って言ってたんだよ」

 

私「ビクッ!!!」

 

社長「なんか接点あったの?」

 

私「・・・・・・・・・・・」

 

 

へっ・・・?

 

 

ナ・・・ナンノコトデスカ?

 

セッテンナンテ・・・ナンモナイデスヨ???

 

 

 

って言うか10秒前の私

 

 

「変な所見られないように」じゃねぇよ・・・!

 

 

 

お前変な所しか見られてねぇからな・・・!!!!!?