黒猫のワルツ

ちょっとした仕返し

 

皆様こんにちは

LUKAでございます

 

 

先日の仕事帰りの出来事

 

いつものように定時で仕事を終えた私は

のんびりと景色を眺めながら車を運転していた

 

毎日毎日

空がまだ明るいうちに帰れる事が約束されているなんて

なんって素晴らしいんだろうか

 

 

以前の会社にだってそれほど不満は無かったけれど

こうやって一度楽を知ってしまうとそれに慣れて

どんどん強欲になっていきそうで恐ろしい

 

そんな気持ちから

私は可能な限り

帰りの車の運転はゆっくりとするようにして

その分空や景色を眺めるようにしていた

 

こんな青い空やら

道を歩く人々の賑わいを眺めながら帰れるなんて

以前までだったら考えられない事だったんだから

しっかり毎日それを堪能しながら帰る!

 

そうやって今ある日常が決して当たり前じゃない

という事を自覚しながら生きねば・・・!

 

 

そして

 

道を歩く人々の賑わいを眺めながら

微笑ましい気持ちで車を走らせていた私は

 

少し人通りが少なくなった道で

ある一人の小さな小さな少女を見つけた

 

 

 

その少女は

小学校低学年くらいだろうか

 

やせっぽっちで小さなその少女は

電柱の近くに前屈みになって立っており

 

何やら腹部を両手でおさえていた

 

 

おや・・・?

 

 

気になった私は

少し車の速度を落としてゆっくりと走る

 

 

少女から視線を外せないまま少女の前を通過

 

 

やはり腹部を両手でおさえたまま

前屈みの姿勢で立っている

 

ちょっと見えにくかったけれど

私の車が通った瞬間少しだけ顔をこちらに向けた時に見えた表情は・・・

 

眉間にしわを寄せて

喜びとも怒りとも悲しみともつかない表情だった

 

 

・・・・・・・・???

 

 

お腹が・・・痛いのだろうか・・・?

 

 

子供の表情はよく分からない

 

 

私もそうだったけれど

子供は大人が思っているよりも

よっぽど色々な事を理解していて

よっぽど色々な感情を秘密にしているものだ

 

 

子供が苦手で

可能な限り接点を持たなかった私だからなお一層なんでしょうかね

 

嬉しい時の表情や

ふてくされている時の表情や

悲しい時の表情なんかは分かりやすいけれど

それ以外の時の子供の表情が

一体何を表すのか全く読み取れない

 

 

だけど

 

両手でお腹の辺りをおさえて前屈み

というポーズから推測すると・・・

 

あの子はお腹が痛くて歩けない・・・???

 

 

気になった私は

車を端に寄せて停めて

ミラー越しに少女を見つめた

 

 

少女は先程の電柱の陰で動かずにじっとしている

 

 

大丈夫なのか・・・?

 

 

子供は大の苦手だけれど

もし万が一困っているのだったら放っておく事は出来ない

 

 

・・・が!!!

 

 

怖い・・・!!!

 

 

今のこのご時世

「どうしたの?」

と子供に声をかけただけで通報される可能性があるのだ・・・!

 

「こんばんは」でも通報されるし

「もう暗くなるから家に帰りなさい」でも通報される

 

 

しかもこの辺りには小学校があって

声をかけた瞬間悲鳴なんざ上げられようものなら

その場で即刻変質者扱い間違いなしじゃないか・・・!

 

 

えっ・・・どうする・・・?

ねぇこういう場合どうしたらいいの・・・?

 

「お腹痛いの?」って声かけて通報されたら

私一生立ち直れない気がするんだけど・・・!

 

 

静かにハンドルを握って前を向く

 

 

あの少女の身よりも自分の身の方が大事じゃね・・・?

 

見なかった事にして帰ろうぜ・・・

 

そもそもお腹が痛いと決まった訳でもねぇんだし

多分大丈夫だろ・・・

私以外の誰かが声かけるよきっと・・・

 

 

そんな気持ちが8割くらいだった

 

 

ハンドルを握ったまま真っ直ぐ前を向いて

しばし停止

 

チラッとサイドミラーを見て

少女がいまだに電柱の陰に居るのを確認する

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

んだぁぁぁぁぁ!!!

 

もぉおおお!

気になっちゃうじゃん!!!!!

 

なんでそんな所にそんな姿勢で居るのさもー!

これで通報されたらおばさんマジで泣くからね!?

半年くらい家から一歩も外に出なくなっちゃうからね!!?

そうなったらあんた保障してくれるんでしょうね!!!?

もーーー知らないからね!!!!?

 

 

ゆっくりゆっくり車をバックさせて行く

 

 

車から降りて声を掛けるよりも

ちょっと離れた車から声を掛ける方が

恐怖心を与えないで済むんじゃないかと考えたのだ

 

 

数メートル離れた位置で車を停め

運転席の窓を開けた私は

 

まだちょっと悩んで・・・周りを確かめる

 

 

周りに他に人が居たら

自分の身に危険を感じるから即刻車を発進させて帰りたい(本音)

 

 

だけど周りには人の姿は無い

 

 

よし・・・

行け自分!!!

 

さよなら今日までのごくごく普通の幸せな生活さん・・・!

 

 

私「どうしたのー!?

  お腹痛いのー!?」

 

 

少女は

 

顔だけ上げてなんだかよく分からない表情で

じっと私を見つめる

 

 

えっ

 

何その微妙な表情・・・

 

今にも悲鳴を上げるんじゃないかって怖くて

こっちの表情も硬くなりそうなんだけど

 

 

私「・・・大丈夫ならー・・・

  それでいいんだけどー・・・?」

 

 

ルカちゃんびびってるぅー!!!

へいへいへい!!!

 

 

一体何なんだろうね!?

この生きにくさって言うの!?

別に変な事しようってつもりもないのに

どうしてこんなにも子供に声を掛けるだけでビビらなきゃならないんだろ!

 

ほんっと生きにくい世の中になったもんだよ!

 

 

少女「・・・・・・・・・・・」

 

 

な・・・なんか言えや・・・

 

だから子供は嫌いなんだよ・・・!

 

 

うんとかすんとか言ったらどうなんだ・・・

 

あっ!

でもあれですよ!?

悲鳴とかは要らないですからね!?

そこは全然ほんと!全く求めていないですからね!!?

そこんとこよろしくお願いしますね!!?

 

 

私「・・・・・・・何か・・・困ってるー???(必死の笑顔)」

 

 

かぁーーーきっつぅーーー!!!

 

 

少女「〇〇!」

 

 

え?

 

なんて???

 

 

少女が何か単語を発した気がするんだけれど

あまりにも突然の言葉だったし

車のエンジン音のせいで全く聞き取る事が出来なかった

 

 

私「えっ?」

 

少女「・・・・・・・・・○○!」

 

 

駄目だ・・・!

聞こえねぇ・・・!

 

「あっち行け!」とか「しね!」とか「この変質者!」ではなさそう・・・

だけど聞こえるようにって車のエンジンを止めたら

ビビッて悲鳴上げたりしない・・・?

 

 

・・・なんだかまるで

野良猫を見つけて捕まえようとしている時みたいな

およそ同じ種族の生き物同士のコミュニケーションとは思えない

すげぇ緊張感なんだけど・・・

 

 

聞こえないよ?

という表情でじっと少女を見つめるも

 

少女は再び視線を下に落として

お腹の辺りをおさえた両手の辺りを見つめ始めた

 

 

ど・・・どうしたんだよ・・・

 

助けが必要なのかそうじゃないのか・・・

頼むから大きな声で・・・

 

 

いや!

駄目だな!

 

この距離は全然ダメだ!!!

 

覚悟決めて近付いてみようぜ!!?

 

こーなったらもうヤケだ!

 

 

車のエンジンはかけたまま(逃げようと思ったら逃げられるように)

ドアを開けて車を降り

恐る恐るなんてもんじゃないくらい恐る恐る少女に近付く

 

 

なんでこんな小さな少女相手に

こんなにビビってんだろう私

 

マジでドラゴンよりこえぇじゃん

 

 

2メートルほどの距離を空けた位置から再び声を掛ける

 

 

私「どうしたのー・・・?

  お腹痛いのー・・・?」

 

少女「・・・・・・・・・・ちがう」

 

私「そ・・・そぉー?

  大丈夫なら・・・

  おばさん・・・行くからね・・・?(と言うか行ってしまいたい)」

 

少女「むし!」

 

私「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

え?

 

なんて?

 

 

少女「もにょもにょもにょもにょ」

 

 

だから聞こえねぇんだよ!

 

もっと大きな声で!!!

腹から声出して喋らんとお前この先生き残れねぇぞ!

伝えたい事があるならハキハキと!

大きな声で相手に伝えるんだよっ!!!

 

 

恐る恐る一歩・・・また一歩とじりじり少女に近付く

 

これこそが最も怪しい雰囲気を醸し出しているんじゃなかろうか

という疑問はあるけれど

それでもいきなり悲鳴を上げられたらどうしよう

と考えてこうせざるを得ない

 

 

私「むし・・・?」

 

少女「むしつかまえたけど・・・」

 

 

虫を捕まえた・・・?

 

 

少女が顔を上げて

お腹の辺りの両手をほんの少しだけ広げる

 

そこをそーーっと近付いて覗き込むと

 

そこには

 

緑色の足の長い昆虫が・・・!!!

 

 

お・・・おぉぅ・・・・・・?

 

君は・・・なかなか・・・あれだね・・・

変わった趣味をお持ちなんですね・・・?

 

 

私「あー・・・そうなんだぁ・・・」

 

少女「服について

   とれなくなった」

 

 

ん???

 

 

少女の前に屈んで虫を覗き込むと

 

虫の足の爪が

どうやら少女のトレーナーにしっかり引っかかって

取れなくなってしまっている様子

 

 

私「あぁなるほど」

 

少女「もってかえりたい」

 

 

うーん

 

そうか

 

 

私「ちょっと待っててね」

 

 

持って帰りたいか

 

私も子供の頃は毎日のように虫を捕まえたもんだった

珍しい虫や綺麗だと思った虫は持って帰って

誰かに見せたい気持ちになるよね

 

分かるよ

 

凄くよく分かるからその願い叶えてやろうじゃねぇか

 

 

 

車のトランクを開けて

山菜採りの時に使用しているビニール袋を一枚取り出し

今度は運転席のドアを開けてダッシュボードから

コンビニから貰った割り箸が入った袋を取り出す

 

割り箸の袋を開けてそこからつまようじだけを取り出した私は

ビニール袋にプスプスと小さな穴を開けた

 

 

それを持って再び少女に近付く

 

 

私「じゃあおばさんが虫取ってあげるから

  この袋に入れて持って帰ろうか」

 

少女「・・・・・・・・・・・」

 

 

これまた何とも言えねぇ表情だなぁ・・・!?

 

なんでさっきからずっと眉間にしわ寄せて

私を疑いの表情みたいな感じの顔で見てくるの・・・?

 

おばさんそんな怪しいかなぁ!?

結構本気で傷付くんですけどー!

 

 

少女がゆっくりと両手を離したのを確認し

虫を掴んだ私

 

これは変わった虫だなぁ・・・

なんて名前なのか全然分からないけれど

 

・・・結構その・・・グロテスクじゃないか・・・?

 

これ私以外の人だったらきっと満足に触れないし

ブログにあれこれ色んな写真を載せたい私でも

読者様が悲鳴上げそうだからって載せないレベルのやつだぞ・・・?

 

 

昆虫の足が取れてしまわないように

じっくりと時間をかけて慎重に1本ずつ

トレーナーに引っかかった爪を外していく

 

 

何分くらいかかったのかなぁー

その間に2名ほど人が近くを通過したんだけれど

その間マジでびびりっぱなしだった

 

変な事してないよ!!!?

 

いたずらとかしてないよ!!!!!?

 

トレーナーいじってっけどこれ違うから!

私が触ってるのは虫だから!

脱がそうとなんてしてねぇからな!?マジで!信じてよ!!?

 

 

 

ようやく昆虫をトレーナーから離す事に成功し

用意したビニール袋に昆虫を入れて口をギュッと結んで

少女に手渡す

 

 

私「はい

  破れて逃げちゃわないように気を付けて持って帰ってね」

 

少女「・・・・・・・・・・・(にこぉ!)」

 

 

やっと笑顔かい・・・!!!

 

おっせぇわ!!!

 

 

そして

 

お礼も言わずに走って行った少女

 

 

あっ・・・あぁ

お礼は無いパターンね

 

なるほどな・・・?

 

 

ま、まぁいいさ

 

私がどれだけのリスクを冒して君に声を掛けたか

この勇気がいかほどのものだったかなんて

からしたらとんとしれない事でしょうよ

 

ぢぐじょう!!!

 

お礼を言われたかった訳じゃねぇけどなんかやり切れねぇな!

 

笑顔をお礼代わりとして受け取っておいてやらぁ!!!

 

 

 

そもそも

お礼を言うように躾をされていないってパターンもあるし

お礼を言うシーンだと認識しなかったパターンもある

 

 

少女が悪いんじゃない

子供に罪はない

 

全部全部世の中の大人たちが悪いんだ

 

そうだそうだ

きっとそう

 

 

お母さんとかお父さんがちゃんと教えていないんだきっと

 

 

 

・・・・・・だから

 

 

 

無邪気な少女が持って帰って来たグロテスクな昆虫を見て

発狂しちまえば良いんだわぁぁぁ!!!